八度の家(地下RC造+木造2階)
奥沢の住宅街に建つ、地下RC構造+木造2階建て住宅です。 木造部分はLVLウォール構造と在来木造のハイブリッド。建物の真ん中に斜めに走る壁
全面LVLウォール。積層のあらわしの壁となり、独特の表情を持つ木のアクセントとなりそうです。
LVLは、以前にみやむら動物病院(写真右)で行った積層面をデザインで見せる特殊な使い方です。
準耐火の外壁材として認定を受けている100%木材の壁(厚さ150㎜)を連続させる壮観なデザインでした。
今回は左右を仕切る壁(写真中央の真ん中の壁)に使います。
八度の家とは、真ん中に貫く壁と互いに反対方向に登る屋根の角度が8度になっている事からついた名前です。



基礎工事は地下室の躯体工事
基礎工事では地下室(半地下)の根伐りで山留を行いながら大量の土を搬出します。
そして地下室の床の部分となる建物の基礎底版から鉄筋を組んで行きます。
ここには大きな地中梁と耐圧版が組まれます。



異種の構造をもつ混構造は、断熱のとりあいが難しい
地下室壁の型枠です。外部は全て断熱材を打ち込みます。地中になる部分は50㎜の3種スチレンフォーム、地上部分は外壁及び通気層が下りてくるので25㎜。枠の納まりのために25㎜部分は一旦2重に張り、あとで1枚剥がす事にしました。
地下の掘り下げたところが断熱材で囲まれるので、見た目は温かそうですが実際は大変寒いです。
夏場、地下室は地熱の影響でとても涼しいのですが、断熱をしっかりおこなっていないと結露が絶えません。
断熱はそのためにしっかりおこないます。



あとで直せないコンクリートの内部
地下室の壁の配筋では、トイレや洗面、換気扇のダクトなどの配管貫通穴と、コンセントやスイッチなどをコンクリート打ち込み前に設置します。
ある程度の大きさの貫通穴は補強のためにひし形状に補強鉄筋が入ります。コンクリート構造の場合、この位置が間違っていたりずれてしまったりすると、後で修正する事はとても困難のためここは慎重に行う重要な作業となります。
地中梁、スラブ、壁、それぞれの段階で設計者や瑕疵保険の配筋検査が行われいます。小さなミスでもコンクリートを打ってしまってから修正を行うのは大変なことなので、複数の目でしっかり検査を行います。



高強度=鉄筋が多い=コンクリート打ち放し仕上げは難しい
地下室の上部分、コンクリートスラブまで鉄筋と型枠が組上がり、コンクリートの打設を行います。地下の壁と天井を同時に打ち込みを行う為、ジャンカ(コンクリートにスキマが出来る事)が出来ないように慎重に打ち込みます。
この上には、これから立上るLVLウォールと在来の木造との接合のために、様々なアンカーボルトのセットを行います。



めったに見られないLVLの建て方
木造の建て方がはじまります。
まず最初に真ん中のLVLのウォールから順番に建てて行きます。LVLは薄い板を重ねあわせてつくったもので、縞々の模様が木の豊かな表情となって現われます。
足元の大きさは1.2m×15㎝。背の高いもので5mあり重さは約500㎏もあるので、レッカーで吊りながら1枚1枚建て込んで行きます。
LVLを建てた後、在来木造部分を組み合わせて行きますが、LVLの壁が建物に対して斜めに入るため、全て特殊な仕口と金物になりなかなか思うようには進みません。しかもこの時点ではLVLは自立していないため危険も伴うため、慎重に行います。



8度の角度が施工を苦しめる。でもその分丈夫になる?
在来木造部分が組まれていくと、LVLもだんだん固定されて安心です。
そして建物の形も少しづつ見えてきました。
屋根は互い違いの勾配になっていて、その真ん中を斜めのLVLウォールの壁が貫いています。右側は低い方の屋根の梁が並ぶところまで組上がりました。
建て方は丸3日かかります。堅牢なLVLの壁が中央にあるのことと、斜めが複雑に組み合わさるために施工を苦しめますが、組んでいくほどにがっしりしていき、ほとんど動かなくなりました。



ジョイストによる木あらわしの屋根
高い方の屋根はジョイストと呼ぶ薄くて背のある小梁が並び、野地板(屋根の合板とともに天井にあらわしになります。本来構造材であるツーバイテンという材を1本1本工場でよって仕上げた材を加工して取り付けたもので、沢山並んだ壮観な木の天井になる予定です。
屋根も形が出来て来ました。中腹の突起はトップライト。吹抜けを照らします。
この上には更に屋根垂木を並べ、180㎜の断熱材を入れて通気層をつくり、それから屋根材を葺くのでまだ屋根の施工は先ですが、これでやっと雨がしのげるようになりました。



暑い夏にとても大事な屋根断熱
屋根の断熱材です。左の写真は2階の屋根。2階はジョイストをあらわすデザインなので、その上の合板に透湿気密シート(タイベック・スマート)を張って、屋根垂木を取り付けてから断熱材を施工します。
断熱材の厚さは18㎝。密度24kgと言って高密度・高性能の断熱材です。
低い方の屋根は、下から断熱材を施工します。高密度の18㎝なので、割と重くそのままでは落ちてきてしまうため、断熱材の方面に張る透湿気密シートの下から落下防止の木材を打ちつけました。
透湿気密シートの継ぎ目に気密テープを張って、屋根断熱は完了です。
断熱材のスキマと、気密シートの継ぎ目の隙間を徹底的につくらないようにする事が、構造体内の結露を防ぐための重要なポイントです。



割と明るく風通しの良い半地下室
地下室はこんな感じです。型枠とサポート(床のコンクリートが固まるまで支える仮柱)が取り払われ、電気配線や設備配管の準備に取り掛かります。地下室といっても半地下扱いで、天井近くにいくつか窓があるのと、階段を下りたあたりにあるトップライトがあって、けっこう明るく、風通しの良い地下室です。
窓の開口にはサッシ固定用の木枠を取付け、アルミサッシを設置します。


設備配管はさや管ヘッダー式
お湯と水(ピンク/青)の他に、温水暖房(白)の配管も床下に走ります。混構造の場合、コンクリート造の上に乗る木造部分を床下として使いますが、一般的に懐が浅いのでこれら配管類や配線などがなるべく交差しないように計画します。



この家の構造の特徴として3点ほど
デザイン的にも大きく前に跳ねだした2階が特徴ですが、床の無い部分を壁強度と屋根床それぞれの跳ね出しの梁を強固に固定して支えています。
木造はこういったデザインが苦手と言われていますが特殊な構造計算と構造壁、金物で成り立たせることが可能です。
左の写真の時点ではかなり揺れましたが、構造壁が完了すると(写真上中)まったく揺れは無くなりました。
右の写真はこの建物のメインの特徴であるLVLの足元の固定金物です。表面からは見えませんが下に40㎝、上に60㎝のボルトで固定しています。
屋根もちょっとした特徴があります。屋根下の並んだ板全てが建物全体の門型フレームの一部としての役割を持ちます。
1枚1枚を23センチの特殊ビスで固定し、完成すると天井を飾る化粧梁となります。




ガルバリウムの外壁はコーナーが肝
LVLは壁厚全てがLVLの無垢壁なので、断熱材は外に張ります。なるべく厚みを押さえるために性能の高いフェノールフォームを使いました。
外壁にガルバリウム鋼板の横葺きを張ります。角部分はコーナー材を使わない掴み込構法。手間がかかりますがすっきりとしていてきれいです。



外観に負けない室内空間の造作
家の中のデザインとして、棚やベンチ、机などにつながる階段回りが独特です。
内部造作(大工の仕事)はこの部分に集中的に難しいところが多く、一つ一つの手作り部分をじっくり時間をかけて行います。
左上から階段~2階廊下へ続く本棚、階段回りの家具やベンチ、階段の骨組み。
左下からは階段裏側の家具、階段上の机回りです。





木工事と絡んで離れない?家具工事
大工仕事が終わりに近づき、まずはほとんどが内部造作とつながる家具の施工です。
階段周りは棚やスチールの手摺が付き、形が出来上がりました。造作家具のキッチン設置(これも階段や本棚とつながっています)し、窓とつながるベンチや収納なども付き、家の中が形づいてきました。
この後は塗装などの仕上げを行い、扉や照明、設備機器類を取り付けると内部は完成です。



外回りも完成に近づいてきました
手摺や木戸などはすべてスチールの亜鉛メッキ仕上げ。外部はLVLの木部以外はすべてグレーで統一されます。
屋根には手作りの長いトップライトが完成しました。熱反射Low=E/網入り硝子のペアガラスで、制作限界寸法いっぱいの長さんです。
道路側に突き出た2階書斎の窓には外付けブラインド。ドイツから2か月かけて取り寄せたものです。



いよいよ完成間近です
南側にはね出した2階が外観の特徴です。隣のご両親の庭から見ると、ガルバのシルバーとLVLの木色が庭の緑の間から見えてきれいですね。
手がかかった階段周りはこんな感じです。階段を登った突き当たりが外観の突き出たはね出しの部分です。


