何の話かというと、葉山の家が上棟した話です。ただ今回の家は通常と違った方法で木材を調達し、そこから長い道のりを経て上棟した家です。
110度くらいに少し開いたかぎ型の建物で、2階のリビング辺りに立ると(写真)、長く大きな屋根垂木が真ん中の隅木から放射状に延びているかのような、広がりのある屋根裏が一面に見えます。
材種は全て桧。
この屋根はこのまま見せる仕上げで、1階も天井を張らず、床裏や梁をそのまま見せるデザインとなります。
この家の主は、ある自伐型林業を営む方と知り合って話に賛同し、その方に伐採してもらった神奈川県の丸太を製材して家をつくろうと考えた方です。
伐採した丸太は山梨県の製材所に入れて、土台、柱、梁、その他多くの木材に製材してもらい、構造材関連をプレカット会社に持ち込み加工します。
それを最終的にくらし工房が仕入れて施工するといった仕組みです。
丸太を自分で買ってきて「これで家建てて下さい」という人は普通いませんが、今回はまさにそれをやったのです。
どうすれば良いか最初は手探りだったはずですが、方法を探し求め、設計者をはじめいろいろな方との出会いと人とのつながりで実現したのだろうと理解しています。
というのも、私たち施工者は、それまでの苦労が半分以上済んだ頃、一番最後に参加させていただいたので、ここまでの経緯を実際に見てきたわけではありません。まとめて話を聞くといろいろ大変だったのだろうと想像しているのです。一番最後は施工者探しに苦労されて、私たちに声がかかったのです。
そして今基礎工事を終え、無事に上棟しました。これから毎日江戸川区から葉山へ大工が通いますが、都内を抜けての75kmという道のりがあり、建築現場としてはけっこう遠いです。
このプロジェクトに誘っていただいた設計者は以前からお世話になっている方なのと、葉山は他にお客様もいて慣れている事もあり受ける事になったのですが、そうはいっても車での移動は、首都高-湾岸線-並木線-横浜横須賀道路-逗葉新道と、けっこうあります。
その中でも逗葉新道はETCが使えない有料道路。とりあえず回数券を100回分2冊購入しましたが、これはETCにしてほしいですね。それから大工は毎日葉山に車で通うので、早く完全自動運転になると疲れた体が少し休まるのになと思います。完全自動の軽トラは当分期待出来そうにないですが(笑)
山を守る林業と書いたのは、自伐型林業が採算性と環境保全を高い次元で両立する持続的森林経営と言われているからです。その場限りの利益を優先して乱雑に伐採してしまう(全てがそうというわけではありませんが)従来型の林業形態ではないく、小規模な自営型であり将来伐採する木を残しながら少しづつ間伐する、山を守りながら林業を行うスタイルが自伐型です。
最近は、山を持たず兼業で行う若い人たちも増えているそうです。
この話には私も少し興味があったので、実際にそういう人と出会って賛同して自分の家をつくろうとまで考えた家主に、私が賛同したということですね。
まだ建ったばかりですが、土台から屋根垂木まで全て4寸角の桧材は、色もきれいで香りがとてもよく、この状態で十分良い環境です。
2階からは少し離れた葉山の海が見え、裏には山が控えているので、やさしい海風が吹く良い場所だと思います。
敷地は明るく環境も良く、済んだ空気の中で暮らすのは気分も体にも良いのでしょう、と東京に住んでいるといつもそう思います。
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